<作動原理と挙動現象及び応用技術の実験的研究> |
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序 章
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陸上スポーツに於いて走行用具を用いるスポーツは、陸上スキー、ローラースケート、インラインスケート、スケートボード、一輪車、自転車、等がある。この序章に於いては従来型の用具に使用されているタイヤ(グラススキー等に見る無限軌道車輪も含む)についてその特性、欠点等について主に採り上げ、ベクトルタイヤとの技術的性能特性の違いを見る。
従来型のタイヤ・車輪を用いたものでその用途を見ると、競技に重点を置くもの、レジャーに重点を置くものなどがあるが、ここでは従来型タイヤとベクトルタイヤの技術的概念の違い等を比較しやすくするために、
◆斜面(ゲレンデ)を利用する用具。
◆平地を利用する用具。
◆登り・下り・平地全てを利用する用具。
に分類して解説を行う。
斜面利用の従来型陸上スキーは、人工芝用スキー、グラススキー、ローラースキー等であるが、スノースキーとの走行感覚の違いが有り、性能機能上からプレーヤーの要望とは大きな開きがあった。又、欧米で普及しているインラインスケート、スケートボード等のブレーキング機能などは現在、未完成の段階で特に安全面が多岐にわたる問題を含んでいる。
こうした問題点を根本的に解決した用具が「ベクトルタイヤ使用のグレステン・グランジャー」であるが、その違いは主にタイヤにある事から、従来型タイヤとベクトルタイヤの技術的性能機能特性を比較して解説する。用具のタイヤ別利用グランドの分類項目を下記に示す。
(1)主に下り斜面を利用するタイヤの性能機能特性
(2)主に平地を利用するタイヤの性能機能特性
(3)登り・下り・平地を利用するタイヤの性能機能特性
そして、こうした陸上走行用具について、その発展経緯を歴史的に見ると、今から約250年ほど前に始まっている。そこに数々のドラマが繰り返されたことは、世界の特許技術情報に示されている通りであるが、そこには現在も多くの欠点や問題があり、一日も早い解決が望まれていた。
中でも、特にスノースキー感覚の陸上スキーを実用化する事の難しさは、不可能と言われる分野であった。
グレステン・プロジェクトチームがあえてこの困難に取り組んだ理由は自分自身の必要からだが、こうした一連の問題点を洗い出し、研究開発課題を整理し、従来タイヤでの性能機能では解決不可能な点にターゲットを絞り、技術革新を達成して根本的な解決を図るものであった。具体的な研究課題は下記の2項目に絞って推進された。
◎従来タイヤ・車輪の使用上から見た一般的技術概念について整理し、問題点を洗い出す。
◎スポーツ用具に関する問題点の洗い出しを行い、問題解決を図る為の新技術開発を行う。
このようにして技術革新が推進され、約27年の年月を掛けて「ベクトルタイヤ」と言う研究開発成果が達成されたのである。
尚、この技術資料は、研究開発成果を実績資料として記し、開発経緯については記載しない。
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第1章 従来型タイヤ・車輪の一般的技術概念 |
1−1 従来型タイヤ・車輪の走行原理 |
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一般的にタイヤは、中心に車輪軸を設け、外周部のゴム製部材とそれを支えるリム及びフランジにベアリングを挿入して構成されている。
走行は軸回転によって行われ、走行方向は車輪軸に対して直角方向である。その場合、車輪軸を軸方向左右に角度傾斜(自動車のキャンバー等)と荷重を与えても、それとは無関係に直角方向に走行する。即ち走行方向はベクトルには全く反応しないのである。
こうした現象は、同時に車両の走行安定性に繋がっており重要な機能の役割を果たしている。 しかし、このタイヤを陸上スキーに用いた場合はどうなるか?・・を見ると、スキーの場合は雪上、陸上を問わず「スライド走行機能やプルーク機能」といった全く正反対の機能が要求され、従来タイヤの機能では使用不可能である・・という結果になります。
単にタイヤをスライド走行させるだけならタイヤ部の弾性変形を利用すればよい訳で実用化するのにこれほど長い(200年以上)開発期間はかからなかった事でしょう。
ここで重要なことは、スキー機能としてタイヤを見た場合、スキーヤーの身体動作や感覚機能に対してそのタイヤがスキーと同じように働くタイヤかどうか・・・?という事に詰アクするのである。
ベクトルタイヤにはタイヤ自体にスキー感覚に合わせた働きが出来るように設計されている。即ち、タイヤ部が単に弾性変形するだけの働きではなく、プレーヤーのエッジング角度や荷重・抜重に対して正確に反応しているのである。
このようにベクトルタイヤは優れた機能を備えたタイヤですが従来タイヤとの違いについてその特性を性能機能別に「表1−1,表1−2」 に整理し、表示する。
この表に見るように従来タイヤの特性は、自動車、オートバイ、自転車、等には全く問題ないが、陸上スキーやインラインスケート等の様にスライド走行やプルーク機能を必要とするスポーツ用具等には全く適していないことが理解できる。
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1−2 従来タイヤと「ベクトルタイヤ」に関する機能比較 |
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上記の表(表1−1)は、陸上スポーツの走行用具として見た場合、従来タイヤ使用のものは舵取り機能やブレーキング機能が現在、未完成であり、最も重要なプルーク機能については、全く不可能であることを示している。反面、ベクトルタイヤを用いた「グレステンスキー、グレステンスケート、グレステンボード」の場合は、こうした従来の問題点を新技術によって完全解決している点が大きな違いである。従来の技術概念とは全く異なる新らしい概念で、世界の不可能を可能にした開発成果を示している。
この新技術は、舵取り装置無しで自由に回転走行が出来、更に、スノースキーと全く同じ感覚でスライド走行やプルーク走行が出来ると言う・・夢のような機能を発揮する特徴を持っている。この不思議なタイヤが開発されたことで、新製品が次々と商品化され、21世紀へ向けて、新たな時代の幕開けとなった。
こうした中で、永年月かけて開発に成功した「ベクトルタイヤ」の意義は大きいと言える。このベクトルタイヤは、国内外から聞き慣れない名前であることから多くの問い合わせが来ている。次の章では「ベクトルタイヤ」について解説する。
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【表1−1】従来型タイヤ使用製品の性能機能特性 |
製品別 / 機能
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舵取り装置
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ブレーキング装置
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プルーク走行機能
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スライド走行機能
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グラススキー |
一輪車方式
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無し
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不可能
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不可能
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ローラースキー |
機械方式
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無し
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不可能
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不可能
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クロカンスキー |
無し
(ステップ)
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無し
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不可能
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不可能
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インラインスケート |
無し
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機械方式
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不可能
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不可能
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ローラースケート |
機械方式
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無し
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不可能
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不可能
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スケートボード |
機械方式
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無し
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不可能
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不可能
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一輪車 |
身体動作
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無し
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不可能
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不可能
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陸上ボード |
機械装置
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-
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-
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-
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自動車・バイク・自転車 |
ステアリング・ハンドル方式 |
機械方式
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不要
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不要
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【表1−2】ベクトルタイヤ使用製品の性能機能特性 |
製品別 / 機能
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舵取り装置
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ブレーキング装置
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プルーク走行機能
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スライド走行機能
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グランジャー
(ロング) |
ベクトルタイヤ
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プルーク方式
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可能
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可能
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グランジャー
(ショート) |
ベクトルタイヤ
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プルーク動作
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可能
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可能
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クロカンGスキー |
ベクトルタイヤ
|
プルーク動作
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可能
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可能
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インラインGスケート |
ベクトルタイヤ
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プルーク動作
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可能
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可能
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スケートGボード |
ベクトルタイヤ
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後方踏み込み方式
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可能
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可能
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スレッドGボード |
ベクトルタイヤ
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ハンドル方式
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可能
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可能
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陸上Gボード |
ベクトルタイヤ
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後方踏み込み方式
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可能
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可能
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第2章 ベクトル・タイヤの名称と概念・構造・特性 |
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「ベクトルタイヤ」という名称は、世界で初めての新製品を開発した開発者が付けた名前です。新概念に基づく呼び名については、最初に開発した人が決める慣例によるものです。したがって、今後は学術資料や技術・生産・販売・等全ての関係分野で「ベクトルタイヤ」という呼び名で使用されます。このタイヤは、従来型のタイヤ概念とは全く異なり、ベクトルに対して正確に反応する特徴を持っています。そんな理由から付けられた名称です。
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2−2 ベクトルタイヤとは・・・? |
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タイヤ外周部の特殊部材又は構造によりいろいろなベクトルに正確に反応した挙動現象を呈する特殊タイヤのことです。したがって、速度、加速度、荷重、等の作用に対して正確に反応します。
タイヤは、一般的に中心に回転軸を設け、軸を固定又は角度変更することで自由な走行が可能となります。この事は、単軸、多軸であっても基本的に変わらない現象です。しかし、多軸構造に於いて軸の角度変更無し(舵取り装置無し)で自由走行を可能にする方法は、従来型のタイヤでは理論的に不可能です。又、同タイヤでは軸方向の左右にスライド走行する事も不可能です。
ところが、「ベクトルタイヤ」の場合、単軸、多軸に関わらず軸左右方向に角度変更して加重すると、そのベクトルに対して正確に反応し、スライド走行や回転走行が自由自在に可能です。更に、多軸構造の場合は、ブレーキ装置無しでアンチロックのブレーキング機能を発揮します。
こうした一連の現象から従来型のタイヤ概念とは、全く異なる概念を持ったタイヤがベクトルタイヤである・・と言えます。したがって、ベクトルタイヤの概念とは、下記のように定義づけられます。
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「ベクトルタイヤ」の技術概念・・ベクトルに正確に反応して、いろいろな挙動現象を呈し、
舵取り装置やブレーキ装置無しで自由走行が可能な特殊タイヤ。
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2−3 ベクトルタイヤの構造及び作動原理と走行特性 |
次にベクトルタイヤの作動原理について述べる。 |
1. |
主軸をフラットに保持してタイヤを軸回転すると直線走行する。この場合はタイヤ部の弾性変形は 通常のタイヤと同じく走行路面から受ける路面衝撃とタイヤにかかる荷重による変形のみである、制御フランジの働きは、全く作用しない為直進走行となる。 |
2. |
車軸方向左右どちらか一方にタイヤを傾けて荷重回転させるとその荷重ベクトルに比例した横方向走行が加わり、回転前進走行と横走行との合力方向にスライド走行する。この場合はタイヤの左右方向の傾斜角度並びに荷重ベクトルに比例したタイヤ部材の弾性変形により制御フランジによって横走行量が制御され、回転前進走行と横走行との合力方向にスライド走行する。 |
3. |
ベクトルタイヤはタイヤ部材の断面形状によりスライド走行の前進方向と横方向の走行比率が決まる。即ち、始点からのスライド走行方向角度が決まる。その角度はタイヤの断面アール形状の大きさに比例する。 |
4. |
ベクトルタイヤの回転走行方向がタイヤ断面のアール寸法によって決まることから、前輪に小アールタイヤ、後輪に大アールタイヤを組み合わせて使用すると、スノースキーのカービングスキーと同じ走行ラインに合わせることが可能となり、陸上でスキー感覚の走行が可能となる。 |
5. |
このようにベクトルタイヤはタイヤ断面形状の半径寸法によっても走行ライン特性を制御出来ることから陸上走行用具の全てに回転走行特性を合わせる事が出来る。 |
6. |
ベクトルタイヤの回転走行特性は、タイヤ断面形状の異なるタイヤの組み合わせとホイールベース及び制御フランジの断面形状によって決まり、自由に設定できる。 |
7. |
制御フランジの制御量は制御フランジの断面形状によって変更することが出来る。 |
8. |
ベクトルタイヤはタイヤの外径寸法及びタイヤ部材の材質(弾性率、硬度)によってもその特性は異なる。同じ断面形状であれば外径寸法が大きい程、転がり抵抗は小さい。しかし、硬度は低い程、路面衝撃吸収性は高まるが、転がり抵抗は大きくなる。この現象は従来タイヤの特性と同じである。 |
9. |
ベクトルタイヤの走行特性はタイヤ部材の断面形状と制御フランジの断面形状によってその特性を制御できる点が大きな特徴である。 |
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第3章 ベクトル・タイヤの基本概念と応用技術 |
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3−1 ベクトルタイヤの基本概念 |
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ベクトルタイヤは、前記した様に「あらゆる荷重ベクトルに正確に反応するタイヤ」である。その作動原理は極めて簡単で、タイヤ自体を左右方向に傾斜させることで自由に回転走行ラインを制御できる走行特性をもっている。そしてタイヤに作用する荷重ベクトルにより様々な挙動現象を呈する事から、単にスポーツ用具のタイヤ・車輪に応用するのみならず、他の産業分野への応用がいろいろと考えられる。
応用技術を考える前に、もう少しベクトルタイヤの走行特性について分析する。従来タイヤを使用した生産品の代表は、自動車、オートバイ、自転車、等々である。この分野にベクトルタイヤを使用したと仮に考えた場合、その走行ラインは一体どうなるか・・・?その結果、次の表(表3−1)にに示すような違いがある。
下表からベクトルタイヤの特性は、従来タイヤの特性と全く異なることが示されている。当然の結果であるが、それはタイヤの機能に関する「技術概念」が全く異なるからである。
この違いを整理すると次のようになる。 |
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<ベクトルタイヤと従来タイヤの基本的な違い> |
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◆ ベクトルタイヤは、複雑な舵取り機構は必要ない。(ベクトル作動方式)
◆ ブレーキングの概念が従来タイヤと全く異なる。(ベクトル作動方式)
◆ 多輪構造に於いて差動の概念が従来タイヤと全く異なる。(自動差動機能)
◆ 従来タイヤに全くない「スライド走行機能」がベクトルタイヤにはある。
◆ ベクトルタイヤを用いた走行用具(走行機具)は、後輪による舵取り方式である。
◆ ベクトルタイヤは、タイヤ部材の材質と断面形状及び制御フランジの断面形状によって特性を変更できる。
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【表3−1】従来タイヤとベクトルタイヤの特性
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項目 / 比較
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従来タイヤに特性
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ベクトルタイヤの特性
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舵取り機構 |
ステアリング機構 |
ベクトル差動機構(*1) |
ブレーキング機構 |
ディスク・ドラム方式 |
プルーク方式 |
差動機構 |
差動ギヤー方式 |
自動差動方式(*2) |
スライド走行機能 |
不要(機能しない) |
ベクトル作動方式(*3) |
前輪機能 |
・駆動機能(差動機能)・舵取り機能 |
・ベクトル作動機能 |
後輪機能 |
・駆動機能 ・差動機能 |
・ベクトル作動機能 |
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*1:ベクトルタイヤはタイヤ部の弾性変形による差動現象としている。(360度方向に変形)
*2:ベクトルタイヤ自体が差動機能を備えている。
*3:タイヤ断面形状と無関係に車輪軸方向加重を与えると全てのタイヤがそのベクトルに対して比例した横方向に走行する機能。全タイヤに変位量が等しくなるベクトルを加えると平行スライド現象を呈する。前後のタイヤに異なるベクトルを加えるとその合力方向に回転走行する。 |
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3−2 ベクトルタイヤの応用技術−1 |
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これまでにベクトルタイヤを応用して新商品化したものには、スポーツ用具関係で陸上スキーであるが、これに関連した陸上走行用具として、インラインスケート、スケートボード、ロングボード、スレッドボード、グランドボード(スノーボードの陸上版)、クロスカントリ・ローラースキー(フリー・クラシカル)、等々である。
陸上スキーは、現在、グレステン・グランジャーのブランドで商品化され、大変好評を得ている。画期的なグランドスキーとして今後の普及発展が期待できる。更に続いて、インラインスケート、クロスカントリー、グレステンボード、スレッドボード、が商品化され近々発売予定である。
この中で特に注目する新商品は、世界で初めての「陸上ボード:グレステンボード」である。この新商品はスノーボードの優れた機能はそのまま引き継ぎ、ブレーキングの欠点を根本的に変えた高性能陸上ボードである。後部ボードを踏み込むだけで簡単にアンチロックのブレーキングが出来る。スノーボードのようにゲレンデの横幅一杯に使うようなブレーキングは全くない。したがって、一般のプレーヤーと一緒にプレーすることが出来、従来の安全面が完全解決された訳である。その上、回転性能が優れており、操作もスノースキーより遙かに易しいことから、陸上ボード(グレステンボード)の普及が期待できる。
現在までに完成したベクトルタイヤ使用のスポーツ用具を表(表3−2)に一覧表示する。この中には、現在、製作中のものも含まれている。何れも過酷なテスト使用に合格した新商品である。 |
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【表3−2】ベクトルタイヤ使用の新商品一覧表 |
商品名
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タイプ
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形式
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市販価格
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ロング・グランジャー |
アルペン用 |
AL20F2-500〜650 |
98.000
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ロング2・ |
アルペン用 |
PC20F2-500〜650 |
89.800
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ショート・ |
アルペン用 |
PC20F2-380〜443 |
69.800
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ミニ・ |
アルペン用 |
PC90F2-500〜540 |
49.000
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ミニ・ジュニア |
アルペン用 |
PC90F2-380〜443 |
45.000
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クロカン |
クロカンフリー用 |
AL90F2-500 |
44.000
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クロカン |
クロカンクラシカル用 |
9F2-800 |
65.000
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インライン・スキー |
ゲレンデ用 |
9F2-460 |
49.000
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インライン・ショート |
コンビネーション |
9F2-360 |
45.000
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インライン・スケート |
コンビネーション |
9F2-120 |
44.000
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スレッド・ボード |
ゲレンデ用(S) |
PC20F2-600 |
159.000
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スケート・ボード |
ゲレンデ用(W) |
PC20F2-800 |
169.000
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グランド・ボード |
ゲレンデ用 |
PC20F2-135-9F2 |
69.800
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